お香の老舗、薫玉堂のお香、松尾の苔。
公式には、”一粒の雨の雫さえも深い緑に染める静寂の庭。ビロードの絨毯を思わせる、滑らかな苔の湿った温かい土の薫りです。” の説明区。
湿った苔や土を、少しグリーンでウッディーにまとめた、和を感じさせるお香。
苔の香りを使用した香水なら使っていたことがあるが、苔の香りのお香ははじめだ。
使っていた香水は、他の香料も複雑に調合されていて、苔の感じは正直あまりわからなかった。
苔のお香、それは良い香りなのか…?
早速取り出してみる。
薫く前の香りは意外にも、沈香のようなスパイシーさを感じる。
もしかしたら、スパイス系なのだろうか?ウッド系なのだろうか…?
恐る恐る火を付けてみると… 大地や自然を感じさせる香りが漂う。
お茶のようなシダーウッドのような香りもして、日本人的な香りの構造で、思ったよりも親しみやすい。
そして、奥に湿った苔や土のような香りがする。
なるほど、これが苔の香りか。
苔の香りをしっかりと嗅いだことはないが、何故かわかる、苔だ。
少し生々しい自然の苔を感じる。
香水系のフレグランスの苔=モスの香料は、色々な香料の中の一つとしてニュアンスを作っている程度なのに対し、これは、苔そのものがテーマになっている。
このお香は、この苔生々しさを楽しむためのものなのだろう。
だが、不思議とこの生々しさが、癖になる。
お茶感やアガーウッド感、この湿った苔の香りが調和して、絶妙な香りになっているのだ。
斬新だが、これは、アリだ。
そして、公式にある”静寂な庭園”を思い浮かべると、これまた日本人に訴えかけてくる、和のお香感を強く感じた。
お香のツーの人しか手に取らないようなお香だが、良い塩梅で和風にしっかりまとめているのは、お香の老舗メーカーならではだ。
ただ、わざわざリピートするかは、微妙だ。
いや、好きだ。
箸休めにもっていてもいいかもと思ったので、リピートしないとは言い切れない。
だが、苔の香りを楽しむ文化が一般的ではないので、部屋で炊いたら家族から「なんか微妙に生臭い?」とか言われそうな気がしなくもない。
別に人を選ぶほど個性的ではないが、好みは分かれるかもしれない、といったところだ。
お香は色々試したけど、どれも飽きてきて何か変わった香りにチャレンジしたい方。
甘くなくて、ちょっと変わり種が欲しい方は、是非手に取ってみてほしい。